終業式が終わった後の日のことだった。
これから始まる夏休みのダラダラした生活に胸を踊らせながら帰宅のバスを待っていた。
「これから何をしよう!」「毎日ODしたい!たくさんODしてたくさん気持ちよくなりたい!」「承認欲求を満たしたい!」「おばあちゃんに貰った夏休みのおこずかいで何を買おう!(後にこの金は全て過食とブロンに消えた)」「承認欲求を満たしたい!」「承認欲求を満たしたい!」
内容は薄汚れていても、夏休みに浮かれるそれは小学生のものとほぼ変わらなかった。ただこの中に1つも思い出だとか友達だとか青春だとかのワードが登場しないのが今思い返しても本当に悲しい。
私の性格が暗い話はここら辺にしてそろそろ話戻します。


バスを待っていると白い一台の車が私の目の前に停車した。中の運転手は私に手招きしていた。
私は(道でも聞かれるのかな?聞かれてもろくに答えられず、そんな自分が嫌になってパニック起こして泣いてしまい更に自己嫌悪に浸るだろうから知ってる場所でも知りませんっていうぞ、それが数メートル先でも数歩先でも知りませんって言うぞ!)と脳内シミュレーションを完璧にしてから運転手に近づいた。

私「どうしましたか?」
運転手「すいません、あのブラジャー透けてます。」















私の頭は真っ白になった。この無駄にとった余白ぐらい真っ白になった。
せっかくシミュレーションしたにも関わらず予想の斜め上すぎる返答が飛んで来てパニック起こして泣いてしまいそうだった、せっかくシミュレーションしたのに意味なかった。
しかしこんな所で動じる流血沙汰子ではなかった、落ち着け流血沙汰子、これはセクハラ何かじゃない、きっとブラジャーが透けてることを教えてくれてる物凄く親切な人なんだ、ただ少し親切の振りまき方が人とは違うだけなんだ、落ち着け流血沙汰子、誰もお前になんかセクハラしない、よしイケる!

私「あ〜wwハハwwwなんか、わざわざすいません〜wwww」
運転手「ブラジャー見せて」












キャパオーバーだった。















ダメだ、どうしよう、変態だ、私でもセクハラされるんだ、私は自分で思ってるよりは酷い見た目じゃないのかもしれない、いや待てよ、ナンパされるのはこいつぐらいならイケるみたいななめられたアレだって聞いたぞ、そうかつまり私こいつになめられてるのか、つかこれナンパですらない、ただの変質者だ、変質者との遭遇だ。つかこれはあれか?もしかしてセクハラとかじゃなくて私が油断したすきに車に連れ込んで絞殺して臓器を転売するとかそういうあれなんじゃないか?嫌だ!首吊りはともかく第三者からの絞殺なんかで死にたくない!乙事主様!!!

私の頭はどうでもいいことを考えるためにフル稼働で動いていた。ここまで考える余裕があるなら逃げればいいのに。本当におバカさんである。

何とか運転手をやり過ごした私は普通にその後もバスを待っていた。学校に引き返して先生に不審者情報を報告するとか場所を変えるかするとかいう発想はなかった。
動転しすぎて燃え尽きたよ真っ白にな状態の私にそんな余地はなかった。「ああ…私は不審者にちょっかいかけられるレベルの見た目はしてるのか…不審者ですら相手にされないと思ってた…」という言葉が頭の中をグルグルしていた。本当にカスみたいな思考回路だと思う。